夜空に咲く花火
人々の熱気
祭囃子の音･･･
そして
低く低くどこか悲しげな声で囁く旧友の声
「高杉…」
物憂げに言葉を吐いた彼の瞳には遠い日の記憶が蘇っていた
『地に堕ちた蝶と飛べない鳥』
思えばアイツは昔から気まぐれな奴だった
蝶のようにﾌﾗﾘと現れては
優しさだけを残して何処かへ行ってしまう。
俺がどれだけ引き止めても
俺がどれだけ名前を呼んでも
手のひらをすり抜けて飛んでいってしまう様は
まるで蝶のようだ
そういえば以前にこんな事を言っていたな
「お前と俺は離れてても絶対に再び巡り会う
運命とかそんな綺麗なモンじゃねェぞ?
お互いに惹き合ってんだ
だが
惹き合ってるのにも関わらず
離れてる間にお前の心を繋ぎ止める事が出来ないのなら…」
「俺は所詮その程度の男だって事だ」
この言葉を思い出すたびに笑いがこみ上げる
馬鹿言ってんじゃねーよ･･･
俺の心がもう離れられないくらいにお前を求めてるのを知ってるくせによ
知ってる上でそんな事を言う奴
だからそんなお前が
何よりも憎くて
何よりも愛しかった…
だけどお前は変わっちまったな高杉
その奪われた片目で、この世への憎しみしかない様な笑みを浮かべて
この国を最も憎んでる
「なァ、変わっちまった今でもお前と俺は惹き合ってんのか？」
空に向かって一人呟く。
無論その声は誰の耳にも入ることなく空に消えてった
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