俺はいつものように新聞を広げて時間を潰していた
ここ数日新聞の見出しに躍る文字は似たり寄ったりだ
【祭りの騒ぎに紛れてﾃﾛ!?
～またもや高杉晋助の影～】
････
暫く新聞に眼を通すと
欠伸をしながら新聞を閉じ
窓の外を眺めた
どうやら外は雨らしい
カラフルな傘が忙しく行き来し
雨粒が窓に当たっては弾ける…
椅子から立ち上がって
窓を開ける
生暖かい風とともに
雨の匂いが鼻をついた
雨は嫌いだ
雨の匂いを嗅ぐと
どうしてもあの旧友の顔を思い出してしまう
『雨の中の記憶』
「おい、
そんな所に突っ立ってると風邪引くぞ」
血に染まった刀を片手に
ぼんやりと空を見上げている俺に
いつも声をかけたのは
他の誰でもない
高杉だった
「なあ、高杉
俺…また仲間を護れなかった」
自責の念に押しつぶされ
消え入りそうな声で呟くと
いつも何も言わずに
自分の腕の中に抱きしめてくれる
そして
繰り返し繰り返し
自分の体が冷えるのも気にせず
同じ言葉を囁く
「お前は悪くねェ」
その言葉に
どれだけ救われただろう
高杉の腕の中は暖かかった
煙管の匂いがする着流しに
声を押し殺して泣いた
俺の唯一の泣き場所は
雨の中の
高杉の腕の中だった
だが
今となっては泣き場所を失った
雨が嫌いになったのは
戻れぬ過去に嘆いていたからかも知れない
ふと
付けっぱなしのラジオから
ニュースの音がした
((ニュース速報です
今日の8時20分頃に
真撰組が高杉晋助とみられる男を見つけて
斬りかかりました))
雨は嫌いだ
((なお
今現在その男は逃亡中…))
大事なものを奪って行ってしまう
･･･
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